金沢木材販売事情(その2:気(木)はこころ)

社長です。

朝晩すっかり寒くなりましたね。紅葉を見に出かけられた方もいらっしゃると思います。私も引退したら、のんびり温泉に浸かって、紅葉を愛でるなんて、やってみたいですね。

さて、今回の失敗談は、私が営業にでるようになってからのことです。最初の担当エリアは、当時我社としては販売力が弱かった南加賀方面でした。我社の名前も知らないところも多い中で、あたってなんぼの精神で、とにかく飛び込みの毎日でした。不在であったり、居ても門前払いであったりが殆どでしたが、それでも一軒、二軒と話を聞いてくださる方もおいでて、ましてや注文を出して頂けた時は、本当にうれかったですね。そんな私にとって貴重なお客様を相手に、こんな失敗をしでかしました。

ある日のこと、いつものように伺うと、「エゾの6尺の貫を1山もってきて」とのこと。ちなみにエゾとは、建築用によく使われる木材のひとつで、6尺とは、この場合材料の長さで1.82mのこと(この業界、いまだに尺貫法を使います)、また貫とは下地材の一つの名称で、幅が60㎜程、厚みが13~15㎜のものです(後述します)。うれしくて、すぐに地元の製材所に問い合わせると、一山だけ残っているというので、すぐに発注をかけ、届くやいなや配達させました。が、暫くしてから、そのお客様より、怒りの電話が届きました。「中開けたら、カビだらけやないか。すぐに見に来い」。飛んでいきました。なるほど、800枚ほど入った梱包の中からでてくるのは、青や赤や黄色に変色した(信号みたい)、変わり果てた姿。当時は下地材を乾燥するといった慣習は無く、水を含んだままの状態でひとまとめにして梱包にしていました。梱包にしてしまえば当然通気も悪く、ましてや梅雨時などに、保存状態が悪いとすぐにカビが出るのです。この時もちょうど梅雨時でした。

どうするのだと、問い詰められ、出した答えは、「とにかく一度全部ばらして、良いものだけ選んで、カビ止め薬を塗ります。どうしようもないものはすべて持って帰ります(取り替えたくても最後の一山です)」。取って返して薬、その他を持参し、お客さんの倉庫で作業開始。まず、10枚ずつ縛ってあるものを、すべてばらばらにして選別、ついで、一枚一枚持参したカビ止め薬を塗って、立てかけました。どれ位時間がかかったはもう覚えていませんが、長く気の滅入る作業でした。

一通り作業を終えて、お客さんに「一晩乾かして、明日縛りにまいります。その時はトラックで来るので、だめなものはすべて持って帰ります。本当にすいませんでした」と伝えると、こんな返事が返ってきました。「大変だっただろう。ご苦労さんだったな。もとはといえばこんなものを出すメーカーが悪い。こちらで縛っておくから明日わざわざこなくてもよい。それから追加でもう1山注文するから、それを持ってきた時にだめなものを引き上げてくれればよい。こんどは良いのを頼むよ」。

頭が下がりました。まことに、気は心とは、このようなことをいうのでしょうか。

 

《エゾ》 マツ科の針葉樹で、北海道、中国東北部、シベリアにかけて分布します。黄白色で、建築用によく用いられます。北陸でエゾといえば、ほとんどロシア等から輸入されるもので、北洋材の一つです。

《下地材》 天井、壁、床などの目に見える部材(仕上げ材といいます)を固定するために使われる部材の総称です。最終的にはすべて隠れてしまいます。

それではまた次回まで。