金沢木材販売事情(その5:飽食の果てに)

社長です。

今日は文化の日。国民の全国的休日にもかかわらず出社しております。急ぎの見積もり依頼のおかげです。本当は昨日までに出さなければいけなかったのですが、間に合いませんでした。休み返上でしたとすれば、許してくれるかな・・・なんて思いながらの作業でした。一段落して、このブログを書いています。

さて、せっかくの文化の日ですので、少し文化的な話をしてみましょう。このブログでは、いつも個人的な失敗談を書き連ねてきましたが、今回は、日本人、そして日本という国家そのものが犯してきた(今もなお)失敗談です。

皆さんの中には、ラワンという木材名を耳にしたことがある方もいらっしゃると思います。ホームセンターの資材コーナーにいくと、ラワンベニヤなんてお品書きをよく見かけますよね。ラワンとは、東南アジアに産するフタバガキ科の広葉樹の総称です。日本でも、合板の材料や建築用材として広く使われています。このラワン材の一つにメラピーという木があります。我々も以前は、破風・ハナカクシと呼ばれる屋根回りの部材や内装材によく利用しました。当時、金沢市内でも、メラピーの丸太を製材して販売してくれるところが何件かあったのですが、いまでは、1件あるかないかです。その残り少ない製材所の社長さんが、この前、しみじみとおしゃっていました。「メラピーの丸太が全然入ってこないんだ。たまに入ってきても、細くて虫食いだらけの質の悪いものばかりだ。そのくせ値段ばかり上げてくる。もうメラピーを挽くのは無理かもしれないな。」

では、メラピーは何故入りにくくなったのか。ラワン材の産地である東南アジアで何が起こっているのか。

戦後、高度経済成長に走る日本は、多くの木材を輸入し、消費してきました。なんと建築用の木材の7割以上が国外産ともいわれています。東南アジアの熱帯林も当然その対象となりました。主に合板や紙の原料とするために日本人はとにかく買いあさったのです。また、有力な産業にとぼしい現地では、手っ取り早い収入源として、森林資源を根こそぎ伐採していきました。その多くが将来の計画も何もなしの違法伐採といわれています。日本では、ある程度の樹齢に達したものだけ伐採し、伐採後は植林するという建前でやってますが、向こうは違います。やるとなると、そこにあるもの全て伐採。後はしりません・・・です。残るのははげ山です。まず、フィリピンのラワンが枯渇しました。すると日本の商社マンは、ついでインドネシアへ向かいます。森林の著しい減少を危惧したインドネシア政府が規制を強めると、今度はマレーシアへと歩を進めます。その執着たるや見上げたものです。売る方も売る方ですが、買う方も買う方です。特に違法伐採と知りながら、買い続ける自称先進国、日本は、著しい環境破壊、森林の消失により生活の場を追われた原住民達のことをどのように思っているのでしょうか。多くの途上国では、資金的に森林の保全を図るのは自前では困難なのです。

日本の商社ばかり悪くはいえません。私たちが享受している、物に溢れた豊かな暮らしを支えてくれているのも彼らなのです。そして、何の反省もなく、消費を続けているのも私たち自身なのです。ご存知ですか。日本で消費されるコピー用紙のその3割がインドネシアからの輸入木材由来であり、その輸入木材の8割が違法伐採の疑いがあるといわれているのです。

ラワン材には大木が多く、直径2mを超すものも珍しくはありません。でも近い将来、そんな木は切り株でしか、その名残をみることしかできなくなる日が来るのかもしれません。書いていて段々悲しくなってきましたので、この辺で止めます。

それではまた、次回まで。